トランクルームの正しい判断
この地域も同様に集合住宅が建つと小中学校が不足し自治体の財政が悪化するからである。
また、法人住民税はその法人の事業所毎に働く人の人数割で課税される。
J社の主力製鉄所はF製鉄所(H県)に移転していて、J社の法人住民税の多くがF市に納められている。
平成一七年時点で、東京二三区内には一〇・五五平方キロメートル、Y市に一八・三三平方キロメートル、K市に一八・〇七平方キロメートル、そして、船橋市にも二一・四八平方キロメートルの工業専用地域がある。
ちなみに一都三県では工業専用地域が二〇一・五六平方キロメートルに及ぶ。
これは、Y線内側の面積の約三倍、ゴルフ場二〇〇コース分の広さである。
大規模な土地の再開発にあたっては、プランをそれぞれの自治体に申請し、都計審の審査を経て許可が得られれば、集合住宅やオフィスが建てられる。
前述のように、二〇〇平方キロメートルを超える一都三県の工業専用地域の二分の一を公園・道路・学校などの公共施設と商業施設にあて、残り半分の土地に集合住宅を容積率四〇〇パーセントで建てることを条件にゾーニングが変更されれば、計算上では広さ八〇平方メートルの三LDKの集合住宅が四五三万戸も供給できることになる。
このところ首都圏のマンション供給戸数が年間八万戸前後で推移していることを考えれば、いまの戸数であれば、計算上はじつに五七年分の供給戸数を賄うことができる。
しかし現実はすべてをすぐに転用することはできない。
一〇~二〇年の時間をかけて、少しずつの転用になるだろう。
K市では、それまで工業専用地域だったC区東部とN区西部の臨海部工業地帯の遊休化に伴う土地利用転換を図り、二一世紀に向けての新しい都市活動を担う場を造ろうと、平成四年頃から本格的に再開発の検討を始めていた。
「HAT(Happy Active Town)計画である。
対象となった地域は、K製鋼所所有の工場跡地四〇万平方メートルと旧K製鉄所所有の工場跡地一六万平方メートル(A地区)、およびそれらの周辺を合わせた約二一○万平方メートルで、新たな都市機能の導入、ウォーターフロントとして整備し、居住人口約三万人(約一万戸)、就業人口約四万人の新しい街の建設計画を策定していた。
平成五年には基本理念が策定され、翌六年には計画を具体化するための調査・調整が行なわれていたが、七年一月に、H大震災が発生し、全半壊二四万九〇〇〇棟、住家全焼六一五〇棟という甚大な被害をもたらした。
被災後は住宅の復興が急務であるとの認識から、それまでの都計審の議論をスピードアップし、住宅の大量供給を早急に行なおうとの方針が打ち出された。
阪神電鉄の海側にベルト状に広がっていた多くの工場も被災して空地になり、その跡地にもマンションが建設された。
政府は特例措置として被災者の住宅取得のための助成制度を定め、住宅購入の際に低金利の「災害復興住宅資金融資制度」を設けた。
三五年間固定で一パーセントという破格の低金利だった。
その制度を利用して工場跡地に建設されたマンションを購人した人もいたが、Kを離れ、Oにマンションを購入した人も少なくなかった。
また、H県内では、私が小学校の頃遠足で行った丘陵地帯や、F線の三田まで、三五年間固定利率一パーセントの優遇制度を利用して購入できるマンションがぎっしりと建てられた。
H大震災後にそこに移り住んだ人は多い。
こうして、T線とF線の沿線がO府やK府で働く人のベッドタウンとなった。
平成一七年四月に起きたF線の脱線事故も、そこに移り住んだ大勢の大たちを利用客として奪い合うT線とF線が所要時間の短縮競争を行なうことで、ダイヤが限界を超えて過密になったことが原因のひとつたった、といえよう。
H電鉄の工業地帯の多くが住宅地に転用されるいっぽうで、たくさんの人がO市やT地区、M地区など他のエリアに移り住んだ結果、とりわけH電鉄線沿線の海側の土地は、震災前の五分の一程度に値下がりしたが、まだ広大な空地が残っている。
住宅地の地価が大幅に下落しているのはH電鉄線沿線だけではない。
震災前に高級住宅が建ち並んでいた山側も同様だ。
かつてH地区で最も高級な住宅街といわれたR町は、一区画が三〇〇坪から五〇〇坪あるような高級住宅街であるが、いまは震災前の五分の一ほどの価格にまで値下がりしている。
なぜそのようなことになったのか。
私か学んだKの甲南学園時代の友人だちと話し合ったことがある。
K製鋼所やK製鉄、K汽船、S金属、S商事、I商事、T社、さらには旧S銀行や旧S銀行までもが本社機能を東京に移していて、東京一極集中が進行していることが原因だろうという結論になった。
最近になってH間の地価下落傾向にもようやく歯止めがかかったようだ。
H圏の住宅地では東部エリアの人気が高く、バブル期の上昇率も高かった。
その傾向が多少戻っていて、平成一九年度「公示地価」のO圏の住宅地上昇率ベスト一〇の多くは、このエリアが占めているが、それでも昔日の地価には程遠い。
国会議員や地方の知事の発言にしばしば、「国と地方の格差是正」という言葉が出てくるが、私は、地方には地方のよさがある、と思っている。
それはさておき、国家のお金は国が上位で地方が下位という感覚に、問題があるように思える。
例をあげれば、耐震強度偽装事件で、強度不足の分譲マンション解体費用の一部を国士父通省が負担する方針を固めた。
K国交大臣(当時)は「公の業務であり場合によっては補正予算を組んでも救済したい」と発言している。
テレビのニュースを見て私はおかしな発言だと思った。
そもそも建物を建てるときは、事業主が建築確認の申請を地方自治体に提出して自治体で審査する。
多くは1ヵ月余りで地方自治体からそれが受理(承認)されて、事業主の依頼でゼネコンが工事にかかり、建物が完成したあと事業主が自治体に竣工検査を依頼し、竣工検査終了後、事業主がゼネコンから引き渡しを受ける手順になっている。
竣工検査にあたっては安全が重視され、耐震上の強度の検査、火災に対する消防上の検査も自治体で行なわれる。
このような流れの中で、その業務の一部を自治体が民間に委託していたとしても、責任は委託した自治体にある。
自治体が責任を問われるべき事項で、「自治体の業務である」ことも国民に知らせるようによく説明しないと三位一体の改革は難しいと思う。
問題が生じれば自治体の首長かその上位責任者の知事が謝罪すべきであり、「すべては国に」という感覚をなくすようにすることが重要なことであろう。
そもそもマンションはクレーム産業といわれ、マンションの事業主と購入者との間のトラブルは建物の区分所有法が施行された昭和三八年以来ずっと絶えない。
それを回避するために、国土交通省は事業主に購人者への「重要事項説明」を義礎づけていて、契約の場ではそれを口頭で読み上げ購入者が説明を受けたことを確認し、書類に署名捺印をして契約することになっている。
また、事業主には一〇年間の瑕疵担保責任を義務づけている。
この問題で被害に遇われた方々の救済はもちろんだが、その救済の責任を果たすのはあくまで事業者と自治体であり、それができないときに補完するのが国であろう。
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